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小塩の上げ松 『夜空は黄泉の国の世界?』 

京都市右京区京北小塩町
上げ松・・・8月23日に近い土曜日

小塩-百日紅

百日紅が咲く静かな里・小塩

①小塩の上げ松

前回の記事広河原 松上げ 『松上げはなぜ地蔵盆に行われているの?』 で『松上げ』の行事についてご紹介しましたが、
同様の行事を『上げ松』と言う地域もあります。
美山町の盛郷・川合・殿、そして京北小塩町では『上げ松』と言っています。

小塩の上げ松 燈篭木を立てる

綱をひっぱって燈篭木(とうろぎ)を立てます。

小塩の上げ松 燈篭木を立てる人々 

小塩の上げ松 松明 

↑ 松明。これに火をつけ、くるくる回して燈篭木のてっぺんに取り付けた「もじ(逆円錐形に杉葉等を詰めたもの)」をめがけて放り投げるんですね~。

小塩-空き缶ランタン 
田んぼの周囲にはたくさんの空き缶を利用したランタンがぶら下げられていて手作り感があふれています。

小塩 夕日に照らされた木々  
夕日に照らされて山が赤く染まり

 小塩 夕焼け 
谷間には鮮やかな夕焼雲が。

午後8時ごろより、上げ松の行事が始まります。

小塩の上げ松  
空き缶ランタンに火がともると空き缶とは思えない美しさ~!(写真下部の点状の光が空き缶ランタン)

②お盆とペルセウス座流星群

8月1日は釜蓋朔日といい、地獄の釜が開く日とされます。
そしてご先祖さまの霊が地獄からこの世に戻ってくると信じられていました。

お盆(旧暦7月1日~15日ごろ、新暦では8月1日~15日ごろ)の時期はペルセウス座流星群(新暦7月20日ごろから8月20日ごろ。8月13日がピーク)が観測される時期と重なっています。
古の人々は星を死んだ人の霊、たくさんの流星がふる様子を死んだ人の霊がこの世に戻ってくると考えて、お盆の習慣が生じたのではないかと私は考えています。

Leonidas sigloXIX

https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ALeonidas_sigloXIX.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/84/Leonidas_sigloXIX.jpg
よりお借りしました。
作者 不明 [Public domain または Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で

上はしし座流星群を描いた絵ですが、写真の松上げの様子に似ていませんか。
ただし、流星が上から下に流れるのに対して、松上げは下から上に放り投げられます。
松上げはお盆(8月1日~8月15日ごろ)に流星になって戻ってきた死者の霊を、地蔵盆である8月24日に天に戻す行事ではないかと私は考えました。

④地獄が天上にあるのは変?


うーん、でも地獄や黄泉の世界は地下にあるんですよね。
地獄の釜が開いて死んだ人の霊が空から流星になって戻ってくるって変かも?
もしかして私の考えは間違ってる?
それがずっと心にひっかかっていました。

面不動鍾乳洞4 

地獄は鍾乳洞のイメージ? 詳しくはこちらの記事を読んでね。↓
洞川温泉 面不動鍾乳洞 『鍾乳洞は黄泉の国?』 

⑤「読」は「黄泉」と同音

月の神の名前は月読命といいます。
太陰暦は月齢をベースにした暦で、月を見れば今日が何日かわかります。
月が三日月なら3日、半月なら7日、満月なら15日というふうに。

月読命の「読」とは、このように月を読んで日にちを知るところからくる言葉ではないかと思います。

しかし、同時に「読」は「黄泉」と同音で、月は黄泉の国を表しているようにも思えます。

北野天満宮 三光門 月と兎 
北野天満宮 三光門 月とうさぎ

⑥根の国の王・スサノオは星の神?

天照大神・月読命・スサノオはいずれもイザナギの子として生まれました。
イザナギは「天照大神は高天原を、月読命は夜の食国を、スサノオは大海原をおさめよ」と言っています。

ところが記紀神話にはスサノオが大海原をおさめたという記述がありません。
スサノオは海の神ではなく、根の国の王として登場します。
記紀神話には海の神として海神が登場し、スサノオと海神は同一神と考えられたりもしていますが。

船場俊昭さんは次のようにおっしゃています。
スサノオを漢字で書くと素戔鳴尊となりますが、これは輝ける(素)ものを失って(戔)ああ(鳴)と嘆き悲しむ神(尊)という意味で、スサノオはもともとは星の神だったのが、のちに星の神という神格を奪われたのてはないかと。

根の国とは黄泉の国と同様のものと考えられています。

ということは、根の国の王=黄泉の国の王=星の神であると考えられると思います。

⑦スサノオは星の神から黄泉の神へと神格を変えられた?

またイザナギに「夜の食国をおさめよ」と命じられた月読命は、記紀神話の中にあまり登場しません。

日本書紀では月読命は天照大神に命じられて保食神のもとへ行きますが、保食神が口から出したもので月読命をもてなそうとしたため、「けがらわしい」と怒って保食神を殺してしまったとあります。

古事記では食物の神・オオゲツヒメが口や尻から出したものでスサノオをもてなそうとしたので、怒ったスサノオがオオゲツヒメを殺したと言う話があります。

もともと夜の食国=黄泉の国=根の国をおさめていたのは月読命だったのではないでしょうか。
それをのちに、星の神であるスサノオを夜の食国=黄泉の国=根の国の神へと神格を変えたのが古事記の物語のように思えます。

⑧古の人々は空は地球の周囲を回転していると考えていた?

もしかして、古代の中国や日本では空は地球の周囲を回転していると考えられていたのではないでしょうか。
空が地球の周囲を回転していると考えないと、西に沈んだ太陽が、翌日東から昇ってくるのはなぜなのか、納得できないと思うんですよね。

そして、地獄=黄泉の国=根の国は日中は地下(地球の下)にあるが、夜になると天上に昇ってくると考えられていたのかも?

黄泉の国 図 

⑨地獄の釜とは月のことだった?

だとすれば、釜蓋朔日(旧暦7月1日)に開く地獄の釜とは月のことではないでしょうか。
朔日とは新月のことで月齢は0です。
このときほとんど月は見えませんが、この日からどんどん月は膨らんでいくので、朔日は地獄の釜が開く日だといってもよさそうです。

そして旧暦7月15日は満月で、地獄の釜が最大に開く日です。

ペルセウス座流星群はこの開いた月の釜の中から、地上に向けて飛んでくると考えられたのではないでしょうか。


小塩の上げ松 着火の瞬間 
燈篭木は15メートルもあるので、燈篭木の先端の『もじ』に松明を乗せるのはたいへんです~。
やっと『もじ』に松明が届きましたよ。

小塩の上げ松  
大きな炎が上がってすごい迫力でした!



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[2017/08/30 17:19] 京都の祭 | トラックバック(-) | コメント(-)