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上賀茂神社 夏越神事 『旧暦の夏の終わりはお盆の始まり』 

京都市北区 上賀茂神社
夏越神事・・・6月30日 


上賀茂神社 夏越神事 
 
●藤原家隆が見た風景が今も目の前に。

風そよぐ ならの小川の ゆふぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける/藤原家隆
(風がそよぐ楢の小川の夕暮れは、すっかり秋の気配が漂っている。みそぎをしている様子ばかりが、まだ夏であるしるしなのだなあ。)


鎌倉時代の歌人・ 藤原家隆(1158年-1237年)が詠んだ歌です。

藤原家隆ってどこかで聞いた名前だなあ?
そうそう、こちらの記事に登場した方ですね。→ 夕陽丘の夕景 夜景 『日想観は守屋を極楽浄土に送る行事だった?』 
大阪の、現在夕陽丘と呼ばれているあたりに庵をもうけ、日想観を修したのが藤原家隆さんでした。

藤原家隆の墓 

この歌の詞書に「六月祓」とあります。

六月祓は夏越の祓、夏越神事などともいわれ、旧暦6月晦日に行われていた行事です。
人形(ひとがた)に息を吹きかけこのて自分の穢れを移し、川や海に流します。
また「ならの小川」とは上賀茂神社の境内を流れる小川のことです。

なので、上賀茂神社の六月祓(夏越の祓・夏越神事)を詠んだ歌であることがわかります。

上賀茂神社では古式を守り、今も鎌倉時代と同じ夏越神事を行っています。
藤原家隆さんが見たのと同じ風景が目の前にあるということに感動します。

●新暦7月に涼しい風が吹いてすっかり秋らしくなった?

風そよぐ ならの小川の ゆふぐれは みそぎぞ夏の しるしなりける/藤原家隆
(風がそよぐ、ならの小川の夕暮れは、すっかり秋の気配が漂っている。みそぎをしている様子ばかりが、まだ夏であるしるしなのだなあ。)


この歌は、こんな風に現代語訳されることがあります。
「涼しい風がそよぐならの小川はすっかり秋らしい気配が漂っている。みそぎをしている様子ばかりが、まだ夏であるしるしなのだなあ。」と。

なるほど、秋になると涼しい風が吹きます。だけどちょっと待ってください。

夏越神事は旧暦の六月の晦日に行われる行事でした。
新暦に換算すると7月ごろです。

7月の京都は夏の真っ盛りで秋らしい気配なんてまるでありません。
それなのに家隆さんはなぜ「みそぎをする様子だけが夏のしるしなのだなあ。」などと歌を詠んだのでしょうか。

●旧暦では秋の始まりは涼しい季節の到来ではなく、もっとも暑い季節の到来を意味していた。

私ははじめ、冷夏だったのだろうかとか、昔の7月は今と違って夜は涼しかったんだろうかとか考えてみました。
だけど、ちょっと考えてみてわかりました。
これは謎でもなんでもなかったのです。

旧暦では1月・2月・3月を春、4月・5月・6月を夏、7月・8月・9月を秋、10月・11月・12月を冬としていました。
新暦は約ひと月遅れなので、新暦の2月・3月・4月が旧暦の春、新暦の5月・6月・7月が旧暦の夏、新暦の8月・9月・10月が旧暦の秋、新暦の11月・12月・1月が旧暦の冬。
だいたいそう考えていいでしょう。
 
古の人にとって秋の始まりとは涼しい季節の到来ではなく、もっとも暑い季節の到来を意味していたのですね~。
「涼しい風が吹いてすっかり秋らしくなった」というのは新暦の感覚だったのです。

上賀茂神社 夏越神事 (2)


●古の人にとって「そよ風」は不気味な風だった?


家隆さんは「風そよぐならの小川のゆふぐれは」と詠っていますが、この風はどうやら涼しい風ではないようです。
それではどんな風が吹いていたのでしょうか?

「風そよぐ」の「そよぐ」は漢字では「戦ぐ」と書きます。
漢和辞典で『戦』という漢字の意味を調べてみたところ、、次のように記されていました。
① 戦う。戦をする。
② いくさ 
③ おののく ふるえる 
④ そよぐ そよそよと揺れ動く
⑤ はばかる 

現代人は『そよ風』」を『吹かれて心地よく感じる優しい風』のことだと思っていますが、古の人々にとって『そよ風』とは葉をざわつかせる不気味な風だったのではないか、と思ったりします。

●秋の到来はお盆の始まりだった。

6月晦日の翌日は7月1日ですが、旧暦の7月1日は釜蓋朔日(かまぶたついたち)といわれていました。
釜蓋朔日とは、地獄の釜の蓋が開く日であのことであり、この日からお盆が始まるとされていたのです。

家隆さんは楢の葉がざわつくようすに、お盆であの世からこの世に戻ってきた霊の気配を感じたのではないでしょうか。
そして「ああ、お盆の季節がやってきたんだなあ」という気持ちを歌に詠んだのではないかと思います。


かみがもじんじゃ なごしのはらえ
 



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[2016/06/30 00:00] 京都府 | トラックバック(-) | コメント(-)