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観音寺 紫陽花  『万葉集 紫陽花の歌 諸兄と諸弟』 


京都府福知山市 観音寺
撮影 2011年6月20日(柏葉紫陽花)2014年 7月7日 (本紫陽花・額紫陽花)

観音寺 仁王門 紫陽花

 
観音寺は720年に伝説的人物の法道仙人が開いたお寺だとされています。
法道仙人はインドの仙人で、鉄の宝鉢を持っていたところから、空鉢仙人とも呼ばれています。
牛頭天王と一緒に日本にやってきたといわれています。


●紫陽花は死をイメージさせる花だった?


智積院 紫陽花 『紫陽花は死をイメージさせる花だった?』 
↑ こちらの記事に、次のような内容を書きました。

①万葉集に2首紫陽花を詠んだ歌がある。

②平安時代の和歌にも紫陽花を詠んだ歌は僅かしかない。

あかねさす 昼はこちたし あぢさゐの 花のよひらに 蓬ひ見てしがな
(明るい日中は噂がうるさくてうっとおしい。紫陽花の花は四ひらですが、宵にあいたいわ)
この歌から、古の人の紫陽花のイメージが、その花びらの数「4」だったのではないかと思える。

④蝶々という言葉は漢語で、倭言葉では「かわひらこ」だが、古の人は死者の魂が蝶になると考えていたため、「かわひらこ」という言葉を忌んで使わなくなり、ついには「かわひらこ」という言葉を忘れてしまったと聞いたことがある。

⑤④と同様、紫陽花は花びらが4枚なので、「四」の音が「死」に通じることを忌み、積極的に紫陽花の歌を詠もうとしなかったため、紫陽花を詠んだ歌が少ないのではないか。

観音寺 仁王門 紫陽花2 

●諸兄と諸弟


万葉集にある2首の紫陽花を詠った歌を鑑賞してみましょう。

①言問はぬ 木すら味狭藍 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)に あざむかえけり/大伴家持
(恋を語らない木ですら、紫陽花のように移ろいやすい。???らの巧みな言葉に私は騙されてしまいました。)


これは大伴家持が大伴坂上大嬢(おほとものさかのうへのおほをとめ)に贈った五首の相聞歌のうちの一首です。

「練りの村戸」は「老練な心」という意味だそうです。
三句目の「諸弟(もろと)」はどういう意味なのかよくわかっていません

②安治佐為の 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ/橘諸兄
(紫陽花が八重に咲くように、いつまでも健やかにいてください。この花を見るたび私はあなたを思い出します。)

ん?①の紫陽花の歌に「諸弟」とありますが、②の紫陽花の歌を詠んだのは橘諸兄ですね。
諸弟と諸兄・・・・この二つの言葉は「諸」が共通し「弟」「兄」と対比になる言葉が含まれています。

もしかして、この二つの歌は対になっているのではないでしょうか。

●諸弟は諸兄に対する家持の悪口だった?


紫陽花の歌を詠んだ大伴家持(718-785)は「諸弟」と言っていますが、もうひとつの紫陽花の歌を詠んだのは橘諸兄です。
大伴家持はこの橘諸兄のことを、悪口で「諸弟」と言っているのでは?

今でもたとえば「良子」という女性がいたとして、「何が良子やねん!やってることはまるで悪子やんか!」みたいに言ったりしますよね。

だとすれば、大伴家持は万葉集を編纂した偉大な歌人、というイメージが粉々に崩れていく音が聴こえてきそう~。
でもそう考えると逆に大伴家持という人物に対して親しみが湧いてきます(笑)。

観音寺 鐘楼 柏葉紫陽花 

●家持を騙した諸兄の歌

これが正しければ、大伴家持は橘諸兄の歌に騙されたということになりますが、確かに家持がいうように橘諸兄はなかなか巧みな言葉で家持を騙しているように思えます。

橘諸兄の歌にある「背子」とは親しみをこめて相手のことを呼ぶ語で、大伴家持のことをさしているのではないでしょうか。
そして「紫陽花は八重に咲くので縁起のいい歌」であるというふうに思わせて、実は「4ひらの花びらの紫陽花は死をイメージさせる花で縁起の悪い歌」だったと家持は大伴坂上大嬢にぐちっているのではないでしょうか。

●和歌という呪術

高田祟史さんは和歌とは文学ではなく呪術だったと説いておられます。
たとえば在原業平が藤原基経の40歳の祝いの席で、次のような歌を詠んでいます。

花 りかひくもれ いらくの むといふなる まがふがに
(桜の花よ、散ってあたりを曇らせておくれ。 老いが来るという道が見えなくなってしまうように。)


五七五七七の冒頭の漢字をつなぐと「桜散老来道(桜散り老い来る道)」となります。
業平と藤原基経は政治的に対立しており、業平は一見、基経の長寿を願うような歌を詠みながら、その裏に呪いをかけていたというのです。

これと同様、橘諸兄は祝いの歌のように見せかけて、実は家持を呪っていたのかも?


観音寺 本堂 柏葉紫陽花


毎度、とんでも説におつきあいくださり、ありがとうございました!

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[2016/06/25 00:00] 京都府 | トラックバック(-) | コメント(-)