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白毫寺 五色椿 『一切経寺と呼ばれた百毫寺』 

白毫寺 五色椿

随分前にフィルムで撮影した百毫寺の五色椿です。
珍しくソフトフィルターを使いました。

時間がたって落ち椿の花びらがばらばらになっていましたが、そういったところにかえって風情を感じましたよ。
タイトルは『終焉』としたのですが、いかがでしょうか。

五色椿が見頃となる4月8日、百毫寺では一切経法要を行っているそうです。(行ったことはないのですが~)

百毫寺は志貴皇子の邸宅跡だと伝わり、鎌倉時代に西大寺の僧・叡尊によって再興されました。
その後、叡尊の弟子・道照らが宋版一切経の摺本を日本に将来して百毫寺の経蔵に収めました。
このため百毫寺は一切経寺とも呼ばれました。

一切経の摺本が百毫寺に収められたのは、百毫寺が重要な寺であると認識されていたためだと思います。

百毫寺は志貴皇子の邸宅跡と伝わっていますが、志貴皇子は暗殺されたという説があります。

日本続記や類聚三代格によれば、志貴皇子は716年に薨去したとありますが、万葉集の詞書では志貴皇子の薨去年は715年となっています。

笠金村という人が志貴皇子の挽歌を詠んでいます。
高円の 野辺の秋萩 いたづらに 咲きか散るらむ 見る人なしに
(高円山の野辺の秋萩は、むなしく咲いて散るのだろうか。見る人もなく。)
この歌は志貴皇子が人知れず死んだことを思わせます。

御笠山 野辺行く道は こきだくも 繁く荒れたるか 久にあらなくに
(御笠山の野辺を行く道は、これほどにも草繁く荒れてしまったのか。皇子が亡くなって久しい時も経っていないのに。)

こちらの歌は『志貴皇子が死んだのはついこの間のことなのに、野辺道がこんなに荒れているのはなぜなのだ』といぶかっているように思えます。

これらの歌から、志貴皇子は715年に暗殺され、その死が1年近く隠されていたように思われるというのです。
(参照/百毫寺 萩 『志貴皇子 暗殺説』



百毫寺の萩

そして『別冊太陽・梅原猛の世界(平凡社)』によれば、奈良豆比古神社の語り部さんが次のような語りを伝承しておられるとのことです。

志貴皇子は限りなく天皇に近い方でした。
そのため、神に祈るときにも左大臣・右大臣がつきそいました。
赤い衣装は天皇の印です。
志貴皇子は毎日神に祈りました。
するとぽろりと面がとれ、皇子は元通りの美しい顔となり、病は面に移っていました。
志貴皇子がつけていたのは翁の面でした。
左大臣・右大臣も神に直接対面するのは恐れ多いと翁の面をつけていました。
志貴皇子は病がなおったお礼に再び翁の面をつけて舞を舞いました。
これが翁舞のはじめです。
のちに志貴皇子は第二皇子の春日王とともに奈良津彦神の社に祀られました。

(参照/奈良豆比古神社 翁舞 『道鏡の父親は志貴皇子だった?』

奈良豆比古神社ではこの伝承にもとづき、毎年10月に『翁舞を奉納しています。

奈良豆比古神社 


奈良豆比古神社の翁舞

奈良豆比古神社の翁舞は能・翁のルーツだと思われます。

奈良豆比古神社の翁舞では翁は冒頭で『とうとうたらりたらりろ』と謎の呪文を唱えます。
能の翁では『とうとうたらりたらりら』となっています。

12月に春日大社で春日若宮様のお祭り、おん祭が行われています。
このおん祭りで12月16日深夜に若宮神社の前で新楽乱声(しんがくらんじょう)が奏されます。
雅楽における楽譜のことを唱歌(しょうが)といいますが、その唱歌は『トヲ‥‥トヲ‥‥‥タア‥‥‥ハア・ラロ・・トヲ・リイラア‥‥』と記されます。

謎の呪文「とうとうたらりたらりろ」とは『トヲ‥‥トヲ‥‥‥タア‥‥‥ハア・ラロ・・トヲ・リイラア‥‥』という唱歌なのではないでしょうか。
つまり、春日若宮様とは志貴皇子のことではないかと思うのです。
(参照/中秋の名月と采女祭 采女神社 『猿沢池の采女伝説のモデルとは?』

春日大社のおん祭は奈良でもっとも盛大に行われるお祭りです。
これは奈良の人々がいかに春日若宮=志貴皇子を厚く信仰していたかを示すものだと思います。

そのため、宋版一切経の摺本は志貴皇子の邸宅跡とされる百毫寺に収められたのではないかなあ、と思ったりします。

百毫寺の五色椿は興福寺の塔頭、喜多院から移植されたものだそうですが、興福寺は藤原氏の氏寺であり、かつて藤原氏の氏神である春日大社と一体化していました。
興福寺においても志貴皇子は厚く信仰されていたことでしょう。
そういった関係から、興福寺の塔頭、喜多院の五色椿が百毫寺に移植されたのかも?

白毫寺・・・奈良市白毫寺町392

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[2015/04/16 11:03] 奈良県 | トラックバック(-) | コメント(-)