京都市左京区 永観堂
2010年12月 撮影
永観堂雪の永観堂には訪れる人もまばらで、静かな冬の京都の旅となりました。
①清和天皇の勅命で創建された寺永観堂は正式な寺名は禅林寺(ぜんりんじ)といいます。
853年、空海の高弟・真紹が故・藤原関雄の邸宅跡を買い取って寺院としたことに始まります。
当時は私寺を建立することは禁じられていたので、863年に清和天皇より定額寺(奈良時代、平安時代に官大寺・国分寺に次ぐ寺格を有した仏教寺院)としての勅許と「禅林寺」の寺号を賜りました。
このとき清和天皇はわずか13歳でした。
京都・八幡にある石清水八幡宮も清和天皇の勅命によって創建された神社です。
石清水八幡宮の創建は860年で、清和天皇は10歳でした。
石清水八幡宮②清和天皇との惟喬親王の世継ぎ争い清和天皇は文徳天皇の第二皇子として850年に生まれ、生まれたばかりで皇太子となりました。
そして858年、わずか8歳で即位しました。
もちろん8歳の子供に政治がとれるはずはなく、実際の政治は清和天皇の外祖父の藤原良房がとっていました。
永観堂や石清水八幡宮の創建は藤原良房の意思によるものだと考えられるでしょう。
文徳天皇には清和天皇のほかに第一皇子の惟喬(これたか)親王がありました。
清和天皇の母親は藤原良房の娘の藤原明子、惟喬親王の母親は紀名虎の娘の紀静子でした。
文徳天皇は惟喬親王のほうを皇太子につけたいと考えていました。
そしてこれを源信に相談しましたが、源信は藤原良房をはばかって文徳天皇をいさめたそうです。
永観堂
③御霊として祀られた惟喬親王政治的に不幸だった惟喬親王は御霊として大皇器地祖神社
(おおきみきじそじんじゃ)、玄武神社や惟喬神社などに祀られています。
大皇器地祖神社御霊とは、怨霊が祟らないように慰霊されたもののことをいいます。
つまり、惟喬親王は怨霊であったということです。
④「永観遅し」と声をかけた阿弥陀如来その後、1072年に永観という僧侶が禅林寺に入ると、禅林寺は阿弥陀信仰の寺となっていきました。
禅林寺が永観堂と呼ばれるのは、この永観に由来しています。
禅林寺の本尊阿弥陀如来立像は後ろを振り返った珍しいおすがたをしておられます。
http://www.eikando.or.jp/jiho_phot/mikaeriamida.jpgそして次のような伝説があります。
永観が念仏を唱えながらこの阿弥陀如来の周囲を歩いていたところ、阿弥陀様が永観と一緒に歩きだしました。
永観が驚いて歩みを止めると、阿弥陀如来は振り返って「永観遅し」と言いました。
それ以来、阿弥陀如来は振り返った姿となりました。
永観堂⑤石清水八幡宮の神主を紀氏が世襲したのはなぜ?①で、清和天皇が創建した神社として石清水八幡宮をご紹介しました。
この石清水八幡宮の神主は代々紀氏が世襲していました。
さきほどお話した惟喬親王の外祖父は紀名虎であり、紀名虎は藤原良房とは政治上のライバルでした。
平家物語にはいずれの孫を立太子させるかで紀名虎と藤原良房がもめ、バトルを繰り返したと記されています。
清和天皇が誕生したときすでに紀名虎は亡くなっているので実話ではないとされていますが、
紀氏と藤原氏の間に確執があったことは事実でしょう。
そうであるのに藤原良房はなぜ石清水八幡宮の神主を紀氏としたのでしょうか。
永観堂⑥先祖の霊は子孫が祭祀または供養するべき日本では古より先祖の霊はその子孫が祭祀または供養するべき、と考えられていました。
古事記にも「大物主神が祟り、その子のオオタタネコが大物主神を祀るお大神神社の神主になったところ、大物主神の祟りがおさまった」と記されています。
どうやら先祖の霊は子孫が祭祀したり供養したりしないと祟ると考えられていたようですね。
石清水八幡宮の御祭神・八幡神と惟喬親王はイメージを重ねられており、惟喬親王は紀氏の血筋の親王なので、石清水八幡宮は紀氏が祭祀するべきであると考えられたのではないでしょうか。
永観堂⑦永観は紀氏だった。永観は文章生・源国経の子で、のち石清水八幡宮別当・元命の養子となっています。
元命は紀氏を称して石清水八幡宮の別当となっているので、その養子となった永観もまた血のつながりはなくとも紀氏の人間だといえるでしょう。
永観は惟喬親王の菩提を弔うために禅林寺に入り、惟喬親王の霊が成仏するように「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えたのではないでしょうか。
そして、禅林寺のみかえり阿弥陀如来は惟喬親王をイメージしたものなのではないかなあ、と思ったりします。
永観堂雪がふりしきる中、静かに日が暮れていきました。
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