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函館山 猿回し 『猿はなぜ馬の守護神とされたのか』 

 
賀県高島市 箱館山
2018年9月下旬 撮影


猿回し

①猿は馬の守護神

古くから猿は馬の守護神と考えられていました。(厩猿信仰)
猿が馬の守り神であるという信仰はインドから中国を経由して日本に伝えられたとされます。

正中年間(1324~1326)成立の石山寺縁起絵巻には、厩につながれた猿が描かれています。
中世より猿飼といって厩祈祷をする人々がおり、これが発展して猿回しになったそうです。

なぜ、猿は馬の守護神と考えられていたのでしょうか?
この理由には諸説あるようです。

猿回し  

②陰陽五行説からくる説

陰陽五行説では世の中全てのものは、木火土金水の5つの組み合わせで成り立つと考えます。

例えば季節では、春=木、夏=火、秋=金、冬=水と考えられていました。
季節は4つなので、木火土金水のうち土が余ってしまいますね。
土は季節の交代をスムーズにするものと考えられ、各季節の最後の18~19日間を『土用』として均等に割り振られました。
本来、土用は夏だけではなく、すべての季節にあるのです。


干支 

旧暦では
1月(寅)2月(卯)3月(辰)を春、
4月(巳)5月(午)6月(未)を夏、
7月(申)8月(酉)9月(戌)を秋、
10月(亥)11月(子)12月(丑)を冬としていました。

虎 1月巳 4月申 7月亥 10月
卯 2月午 5月酉 8月子 11月
辰 3月未 6月戌 9月丑 12月


そして陰陽道では世の中に存在する物全てに始まりがあり(生)、次に壮んになり(旺)、最後に終わる(墓)という気の循環があると考えるそうです。これを三合といいます。

三角



三合は上の図の大きな三角形が示すような関係になっています。

「申-子-辰」「巳-酉-丑」「寅-午-戌」「亥-卯-未」の4つのグループを三合というようですね。

火の三合は寅(生)・午(旺)・戌(墓)、水の三合は申(生)・子(旺)・辰(墓)となり、
厩猿信仰は、馬の火(旺)を猿の水(生)で制御しようという仕組みであると、吉野裕子氏はおっしゃっています。

えーーっ、なんで馬の火(旺)を子の水(旺)で制御しないの?
大量の水をかけて水浸しになったら困るから?
う~ん、なんかこじつけっぽいなあ?

③猿は十一面観音、馬は馬頭観音

猿は十一面観音、馬は馬頭観音であり、十一面観音によって馬頭観音を制御することができる、という信仰からくるのではないかと、思ったりします。

十一面観音で有名な像で、法華寺像があります。
光明皇后の姿を映したともいわれる美しい像ですが、特徴的なのはその腕の長さです。
この十一面観音は特別腕が長いですが、その他の十一面観音も腕が長いのが多いです。

Hokkeiji Nunnery Eleven-Headed Kwannon I (303)

https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hokkeiji_Nunnery_Eleven-Headed_Kwannon_I_(303).jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/7/77/Hokkeiji_Nunnery_Eleven-Headed_Kwannon_I_%28303%29.jpg
Imperial Japanese Commission to the Panama-Pacific International Exposition [Public domain]



私はこの像を拝んだとき、失礼かもしれないですが、猿のようだ、と思いました。
猿は膝を曲げて立つので腕が長く見えるんですよね。

大阪天満宮 猿回し 

大阪天満宮にて

厩猿信仰はインドから中国を経て日本に伝わったということですが、中国にはキンシコウという金色の猿がいます。
日本猿も手が長いと思いますが、キンシコウはさらに腕が長いように見えます。
http://japanese.china.org.cn/photos/2018-08/06/content_58143845.htm

またインド神話に登場するハヌマーンという神猿の像は、顔が5つある姿で表されることがあり、十一面観音を思わせます。
インドや中国にはハヌマンラングールという猿が生息していますが、やはり手が長いです。







十一面観音は左手に花瓶を持っていることが多いです。
花瓶には蓮の花が活けられていますが、花瓶の中にはもちろん水が入っているでしょう。
また、水神は女神であることが多く、川や池のほとり二は弁財天や善女龍王が祀られています。
猿(十一面観音)=水と考えられます。

一方、馬頭観音は他の観音像が温和で女性的なお姿をされているのに対し、憤怒の表情をしています。
また光背には燃え盛る炎をデザインしたものが用いられることがあります。
すなわち、馬(馬頭観音)=火、といえます。

④ビナヤキャ女神=十一面観音、鬼王ビナヤキャ=馬頭観音?

大聖歓喜天というみほとけがいます。


Icon of Shoten

https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3AIcon_of_Shoten.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/c/c7/Icon_of_Shoten.jpg よりお借りしました。
作者 不明 (平安時代の図像集『別尊雑記』(心覚 撰)巻 42より) [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で


大聖歓喜天は象頭をした男女双体の神で、次のような伝説があります。

インドのマラケラレツ王は大根と牛肉が大好物でした。
牛を食べつくすと死人の肉を食べるようになり、死人の肉を食べつくすと生きた人間を食べるようになりました。 
群臣や人民が王に反旗を翻すと、王は鬼王ビナヤキャとなって飛び去ってしまいました。
その後ビナヤキャの祟りで国中に不幸なできごとが蔓延しました。
そこで十一面観音はビナヤキャ女神に姿を変え、ビナヤキャの前に現われました。
女神は『仏法を守護することを誓うならおまえのものになろう』と言い、ビナヤキャは仏法守護を誓いました。


この物語は、御霊・荒魂・和魂という概念をうまく表していると思います。

神はその現れ方で、御霊(神の本質)・荒魂(神の荒々しい側面)・和魂(神の和やかな側面)の3つに分けられるといわれます。
そして荒魂は男神を、和魂は女神を表すとする説があります。
すると神の本質である御霊とは男女双体ということになると思います。

御霊・・・神の本質・・・・・・・歓喜天・・・・・・・男女双体
荒魂・・・神の荒々しい側面・・・鬼王ビナヤキャ・・・男神
和魂・・・神の和やかな側面・・・ビナヤキャ女神・・・女神


またビナヤキャ女神が十一面観音の化身とあるところに注意してください。
鬼王ビナヤキャは馬頭観音のは化身であると考えられたのではないでしょうか。

御霊・・・神の本質・・・・・・・歓喜天・・・・・・・・・・・・・男女双体
荒魂・・・神の荒々しい側面・・・鬼王ビナヤキャ・・・馬頭観音・・・・男神(火の神)
和魂・・・神の和やかな側面・・・ビナヤキャ女神・・・十一面観音・・・女神(水の神)


猿回し 竹馬   

⑤妙性寺縁起

妙性寺縁起にはこんな伝説が伝えられていますよ。

晩年、小野小町は天橋立へ行く途中、三重の里・五十日(いかが・大宮町五十河)に住む上田甚兵衛宅に滞在し、「五十日」「日」の字を「火」に通じることから「河」と改めさせた。
すると、村に火事が亡くなり、女性は安産になった。
再び天橋立に向かおうとした小町は、長尾坂で腹痛を起こし、上田甚兵衛に背負われて村まで帰るが、辞世の歌を残して亡くなった。

九重の 花の都に住まわせで はかなや我は 三重にかくるる
(九重の宮中にある花の都にかつて住んだ私であるが、はかなくも三重の里で死ぬのですね。)
後に深草の少将が小町を慕ってやってきたが、やはり、この地で亡くなった。
(妙性寺縁起)


五十日→五十火→火事になる→五十河→河の水で火が消える→火止まる→ひとまる→人産まれる

このような語呂合わせのマジックで村の火事はなくなり、女性は安産になった。

火の神は荒魂で男神ですが、水の神は和魂で女神なので、火が止まり、さらに女神なので、火止まる→人産まれるというわけです。

猿回し2

⑥水克火

陰陽五行説には『相生説』と『相克説』があります。

『相生説』とは、五行が対立することなく、木火土金水の順で、五元素が順送りに相手を生じていくという説です。

『木生火』・・・・・・木は摩擦により火気を生ずる。
『火生土』・・・・・・火は燃焼して灰(土)を生ずる。
『土生金』・・・・・・土は金属を埋蔵している。
『金生水』・・・・・・金属は表面に水気を生ずる。
『水生木』・・・・・・水は植物(木)を育てる。


『相剋説』は五行同士が相互に反発し、木火土金水の順で、五元素が順送りに相手を剋していくとする説のことです。

『木剋土』・・・・・・木は土中の栄養を奪う。
『土剋水』・・・・・・土は水の流れをせきとめる。
『水剋火』・・・・・・水は火を消す。
『火剋金』・・・・・・金属は火に溶ける。
『金剋木』・・・・・・金(斧など)は木を切り倒す。


この『水剋火』という考え方により、水=十一面観音が火=馬頭観音を制御すると考えられたのではないでしょうか。

 
猿回し3  

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