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八坂神社 おけら詣 『朮と屠蘇と蘇民将来』 

 
八坂神社・・・京都府京都市東山区祇園町北側625
をけら詣・・・12月31日 午後7時半ごろより 


八坂神社 朮詣

①をけら詣


12月28日、八坂神社では鑽火式(さんかしき)が行われます。
鑽火式とは火鑽杵(ひきりきね)と火鑽臼(ひきりうす)で御神火を鑽(き)り出す神事です。

12月31日、午後7時ごろ、神職さんによって御神火が『をけら灯籠』に点火されます。
をけら燈籠の中には護摩木のほか、キク科の薬草である朮(おけら)が入っています。
朮は漢方薬の屠蘇散の主原料で独特の芳香があります。

人々は吉兆縄ををけら火にかざして火を貰い受け、火が消えないように吉兆縄をくるくると回しながら家に持ち帰ります。
これををけら詣といいます。
持ち帰ったをけら火で正月のお雑煮を焚くと、無病息災のご利益があるなどと言い伝えられています。

でも、をけら火を持ったままバスや電車に乗ることはできません。
ある人に「どうしたらいいのか」と聞いたところ、
「白金カイロにをけら火を移して家まで持ち帰り、その火でガスコンロを着火させて雑煮を焚けばいい。」と教えてくださいました。

ナルホド!

八坂神社 楼門

②お屠蘇、をけら火など新年を迎えるのに欠かせない朮

正月にはお屠蘇を飲む習慣がありますね。
お屠蘇は漢方薬の屠蘇散をみりんや酒に浸して作ります。
屠蘇散の主原料は朮(おけら)です。

あれっ、をけら火はキク科の薬草・朮を燃やす火のことでしたね。
どうやら朮は新年を迎えるのに欠かせない薬草のようですね。

お屠蘇は『蘇という悪鬼をほふる(体を切ってばらばらにすること)』という意味だとされます。

八坂神社 舞殿

③お屠蘇の蘇は「怨霊として蘇った者」という意味?


『大鏡』には、藤原師輔が出合った百鬼夜行の先頭には蘇我入鹿がいたと記されています。
蘇我入鹿は飛鳥時代に権力を握っていた人物で、645年中大兄皇子に暗殺されました。

多武峰縁起絵巻 複製(談山神社) 
多武峯縁起絵巻 複製 (談山神社)に描かれた斬首された蘇我入鹿と入鹿を斬る中大兄皇子
入鹿の首は皇極天皇(女帝)の御簾に食らいついています。

平安時代の人々が蘇我入鹿を悪鬼(怨霊)だと考えていたことがわかりますね。
蘇というのは怨霊として蘇ったもの、という意味なのかもしれませんね。

④1年の変わり目=鬼?

そして、蘇とは悪鬼だといいますが、滋賀県の延暦寺では大晦日に追儺式を行っています。
現在では追儺式は節分に行われることが多いですが、延暦寺のお坊様の説明によれば、追儺式とはもともとは大晦日に行う行事であったということです。

延暦寺 追儺式

延暦寺 追儺式

干支では旧暦12月は丑、旧暦1月は寅なので、旧暦の1年の変わり目は丑寅です。
丑寅は方角では東北ですが、東北は鬼が出入りする方角、鬼門として忌まれました。
丑寅とは、1年の変わり目をあらわすと同時に、鬼をあらわすものでもあったのですね。
追儺式とは「1年の変わり目=鬼」を追い払うことで新年を迎えるというまじないだと考えることができるでしょう。

干支  

すると、新年にお屠蘇を飲むという習慣も、同様に、蘇=鬼=1年の変わり目を飲み干すことで新年がくるというまじないであったと考えられますね。

『飲む(呑む)』と言う言葉には水などの液体を体内に摂取するという意味の他に、相手を圧倒するという意味もある。
すなわち、お屠蘇を飲むということは、蘇という悪鬼を圧倒するという意味もあるのではないでしょうか。

⑤蘇民将来

お屠蘇の『蘇』は悪鬼であるということになるが、八坂神社には『蘇』に関係するものがあります。
祗園祭の際、売り出される粽に『蘇民将来子孫也護符』がついているのです。

神代の昔、蘇民将来と巨旦将来という二人の兄弟があった。
蘇民将来は貧乏で巨旦将来は金持ちだった。
しかし貧乏ではあったが蘇民将来は武塔神(スサノオ)に宿をかし、巨旦将来はこれを断った。
後に疫病が流行ったとき、武塔神は蘇民将来の子孫には茅の輪をつけて疫病から守ったが、茅の輪をつけない者はすべて死んだ。


武塔神とはインドの神・牛頭天皇のことです。
これが日本に伝わって、記紀神話のスサノオと習合されたとのだといわれます。
八坂神社では牛頭天皇と素戔嗚尊を習合して祀っています。

をけら詣・・・・・・・・薬草である朮を燃やす
屠蘇散・・・・・・・・・朮を主成分とする漢方薬
屠蘇・・・・・・・・・・屠蘇散を酒やみりんにつけたもの。『蘇(悪鬼)を屠る』という縁起をかついで正月に飲む。
祇園祭(八坂神社)・・・・縁起物の粽には『蘇民将来子孫也』の護符がついている。

こうしてみてみると、朮と蘇と八坂神社には、何かつながりがあるように思えませんか?

⑥地中に住むおけらとスサノオ

昆虫にも『おけら』と呼ばれるものがいます。
体長3センチほどの、茶褐色でコオロギに似た昆虫です。
地中に住んでいて、ミミズや植物の根を食べます。
ここから古の人々は、おけらを八坂神社の御祭神・スサノオのイメージに重ねたのではないか、と私は考えています。




記紀によれば、黄泉の国と同じものである根堅洲国に素戔嗚尊の宮があるとされます。
根堅洲国とは地中にあって、植物の根が生えている国のことではないかと思います。

一方、黄泉と言う言葉は、もともとは漢語で、陰陽五行説では黄は土を表すというところから、地中を流れる泉を意味する言葉なのだそうです。
こちらもやはり、地中の国であることを示していそうです。

植物の朮はその根が生薬となります。
また、蒼朮を焚く(そうじゅつをたく)などと言い、梅雨時に朮の根を焚き、湿気と悪臭をとる習慣などもありました。 
植物の朮は根が薬などに利用されるところから、古の人々に「根の国」をイメージさせたのかも?

貴船神社 貴船祭 出雲神楽

貴船神社 出雲神楽 八岐大蛇を退治するスサノオとクシイナダヒメ

八坂神社は疫神として信仰されていますが、暦の神でもあります。

八坂神社の御祭神はスサノオ・クシイナダヒメ・八柱御子神。
スサノオは天道神ともいい、吉方・凶方のすべてを支配します。
クシイナダヒメは暦と方位の神で、歳徳神とも呼ばれます。この神のいる方位は「恵方」とされます。
八柱御子神とはスサノオと櫛稲田姫命の間に生まれた八人の皇子のことで、八将軍・八将神ともいいます。
(総光天王、魔王天王、倶魔羅天王、得達神天王、良侍天王、侍神相天王、宅神相天王、蛇毒気神天王)
十二支によってその所在を運行し、凶方を司ります。

 
なぜスサノオは疫病の神であると同時に暦の神でもあるのでしょうか。
私は「方角・季節がともに十二支であらわされるからではないか」と思います。
そう、丑寅は鬼でもあり、1年の変わり目でもあるのでしたね。

先日、インターネットを検索していたら面白い論文がありました。

それによれば、大年神とは疱瘡神であるといいます。
アイヌ地方では天然痘(疱瘡)のことを pa と言い、疱瘡の神( pa kor kamuy)は、歩行する神(apkas kamuy)、旅行する神(paykay-kamuy, payoka-kamuy)などとも言われ、神が訪れることで病気が流行ると考えられていました。
pa は『疱瘡』の他に、『頭』『煙、湯気』『口(くち)』『年(歳)、季節』などの意味があり
ここから『大年神』とはpa kor kamuy に漢字を当てたものなのではないかというのです。

参照/大年神と疫神

そう考えると正月に八坂神社を参拝するのはとても理に適った事のように思えますね。



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