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黒岩水仙郷 水仙 『木霊の神と、虚像に殺された男』 

兵庫県 南あわじ市 黒岩水仙郷
2013年2月初旬 撮影

黒岩水仙郷3

近所の公園で水仙が見ごろになっていたので、昔撮影した黒岩水仙郷の写真を引っ張り出してきましたが、まだ早いかもしれませんね。

①水仙はなぜ海岸沿いに群生しているの?

水仙という名前は中国の古典に「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」とあるところからくるといわれています。

でも水仙は水生植物ではありませんね。
ですが、海岸沿いに群生しているのをよく見かけます。
黒岩水仙郷、越前海岸など、いずれも水仙の群生地は海岸沿いです。

なぜ水仙は海岸沿いに咲いているのでしょうか。
ひとつの説として、水仙には強い毒性があるため動物によって種が運ばれるということがなく
そのため水に流されることによって繁殖地を広げていったためではないかというのがあります。

黒岩水仙郷2

②ギリシャ神話に登場する美少年・ナルキッソス

水仙は学名をナルキッソスといいますが、これはギリシャ神話に登場する美少年・ナルキッソスという美少年からきます。

Narcissus-Caravaggio (1594-96) edited

カラヴァッジオ
によって描かれたナルキッソス
https://commons.wikimedia.org/wiki/File%3ANarcissus-Caravaggio_(1594-96)_edited.jpg
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/2/29/Narcissus-Caravaggio_%281594-96%29_edited.jpg よりお借りしました。
ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオ [Public domain], ウィキメディア・コモンズ経由で"


みなさんご存じのように、ナルシスト(自己愛)の語源となった人です。

③ナルキッソスの物語

ナルキッソスはアプロディーテーより贈り物を送られましたが、これを侮辱しました。
アアプロディーテー「憎たらしいナルキッソスめ!ナルキッソスを愛した相手を拒むよう、魔法をかけてやる!」
アメイニアスは男性でしたがナルキッソスを愛していました。(ナルキッソスは多くの男性からも愛されていました)
しかしナルキッソスにふられて自殺してしまいます。
森の妖精・エーコーもナルキッソスに恋をしていました。
しかしエーコーはゼウスの浮気を手助けしたとして、ゼウスの妻ヘーラーに憎まれ、他人の言葉を繰り返すことしかできませんでした。
そのためナルキッソスは退屈になりエーコーを振ってしまいます。
侮辱を罰する神・メネシスはこれを見て、ナルキッソスが自分しか愛せないように魔法をかけました。
ナルキッソスは泉に映った自分に恋し、水面に映った自分に口づけしようとして泉に落ちて死にました。
ナルキッソスが死んだあと、水辺には水仙の花が咲いていました。

黒岩水仙郷4

④日本にもいた山彦の神

エーコーは木霊(山彦)だったんですね。
日本にも木霊の神だと思われる神がいます。
一言主大神です。

こんな話がありますよ。

雄略天皇が葛城山に登る時、向かいの山の尾根伝いに山に登る人たちがありました。
その一行は天皇の一行とまったく同じいでたちをしていました。
雄略が『この大和の国に私をおいてほかに大君はないのに、今誰が私と同じ様子で行くのか』と問うと、向かいの山の方から、全く同じ返答が返ってきました。
雄略やお供の者が怒って矢を弓につがえると、向こうの人たちも矢をつがえました。
雄略が『そちらの名を名乗れ。そしてそれぞれが自分の名を名乗って矢を放とう。』と言うと、『私が先に問われた。だから私が先に名乗ろう。私は悪いことも一言、良いことも一言、言い放つ神。葛城の一言主の大神である。』と返事が返ってきました。
これを聞いた雄略は畏まり、『おそれおおいことです。わが大神よ。現実の方であろうとはわかりませんでした。』
と言い、自分の刀や弓矢、お供の着ている衣服も脱がせて拝んで献上しました。
一言主大神は、手を打ってそれを受け取り、雄略が帰る時、一言主大神一行が雄略を長谷の入口まで送りました。 


雄略天皇と全く同じいでたちをし、同じ言葉を返す一言主大神とは木霊(山彦)を神格化したものなのではないかと私は考えました。

高校のときにワンダーフォーゲル部に所属していた友人に聞いたのですが、葛城山から金剛山へ至るダイヤモンドトレールと呼ばれる道では、よく山彦が聴こえるそうです。

④イチョウの木は一陽の木

一言主神社の御神木は樹齢1200年と伝えられるイチョウの木です。
ダイヤモンドレールで聞こえる山彦(木霊)は、このイチョウの声だと考えられたのでしょう。

一言主神社 公孫樹2

一言主神社 イチョウ

一言主神社では冬至の日に一陽来復祭を行っていますが、イチョウは一陽の掛詞になっていますね。
イチョウは冬至に向かっておとろえいく太陽にぴったりの木です。
現在の日本では太陽は赤で描かれることが多いのですが、本来太陽は黄色の天体です。
そして秋になるとイチョウの木は太陽の色と同じ黄色に色づき、徐々に葉を散らしていきます。
それはまるで冬至に向かって衰え行く太陽をあらわしているかのようです。
そして公孫樹の葉がすっかり散ってしまったころ、冬至をむかえるというわけです。

一言主神社 一陽来復祭

一言主神社 一陽来復祭

一言主神社 一陽来復守り

⑤長谷は死の国?

一言主大神は雄略天皇を長谷まで送っています。
これは一般に、一言主大神と雄略天皇が仲良くなったことを表すものととらえられているようです。
でも、私はそういうことではないと思います。

長谷の枕言葉は『隠国(こもりく)の』ですが、『隠国の』は『志多備』の枕詞でもあります。
『黄泉の国』のことを『志多備国』ともいいます。
『隠国』とは『志多備国』『黄泉の国』のことで『長谷』は死の国なのではないでしょうか。

長谷という地名は葬送の地を意味していると聞いたこともあります。
今でも長谷寺の奥の院あたりにはたくさんのお墓があります。

長谷寺 観音万燈会

長谷寺 観音万燈会

⑥虚像に殺されたナルキッソスと一言主大神

泉に映ったナルキッソスはナルキッソスの虚像です。
また、木霊(山彦)である一言主大神は雄略天皇の虚像です。

そして、本物のナルキッソスも、生きた人間である雄略天皇も死んでしまっています。

雄略天皇は『そちらの名を名乗れ。そしてそれぞれが自分の名を名乗って矢を放とう。』といい、
一言主大神は、『私が先に問われた。だから私が先に名乗ろう。』と言っていますね。

一言主大神は雄略天皇より先に名乗って雄略天皇を射、それによって雄略天皇は死んだのでしょう。
雄略天皇は自分の虚像である一言主大神に殺されたのです。

ナルキッソスも泉に移った自分の虚像に殺されたと言ってもいいでしょう。
ギリシャ神話と日本神話はとてもよく似ているなあ~、と思います。

シルクロードを通して日本にギリシャ神話が伝わったのかも?

黒岩水仙郷 

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